グラン・トリノ

これ、かなり楽しみにしていた映画。クリント・イーストウッドってすごいよね。私は映画を(いっぱい)観始めてから日が浅いので(2003年秋ごろから映画に開眼した)、いわゆる「代表作」はたくさんは観ていない。「マディソン郡の橋」「ミスティック・リバー」「硫黄島からの手紙」「チェンジリング」「グラン・トリノ」くらい。
だけど、とっても完成度が高い質の良い映画だって思う。
この「グラン・トリノ」、すごかったです。「すごい」というのは的確ではないなあ。えーと、私、去年、ドラマ「風のガーデン」を見た時に「このドラマは完璧」と書きました。その時に感じたのと同じ気持ち。「この映画は完璧。」まさに完成形だと思いました。

あらすじは
妻に先立たれ、息子たちとも疎遠な元軍人のウォルト(クリント・イーストウッド)は、自動車工の仕事を引退して以来単調な生活を送っていた。そんなある日、愛車グラン・トリノが盗まれそうになったことをきっかけに、アジア系移民の少年タオ(ビー・ヴァン)と知り合う。やがて二人の間に芽生えた友情は、それぞれの人生を大きく変えていく。(シネマトゥデイ)
このクリント・イーストウッド演ずる「ウォルト」がへんくつじじい!最初の教会のシーンでも、自分以外のすべての人にむかついてる。自分だけがこの世の中で唯一正しい!と思っている。誰に対しても厳しい言葉、本当ににくったらしい態度・・・。ん・・・?こんな人、知ってる。すごくよくわかる。・・・私、一緒に住んでる~!そういう人と~!夫の父でーす! 最後まで観れば、この人いい人って思うと思うけど、映画の前半では「絶対近所にこんな人いたらイヤだ~っっ!」って思いながら観てると思う。私、一緒に住んでますから~っっっっっっ!残念っ!
ま、それは、さておき・・・。

たぶん、この映画って制作費とかそんなにかかっていないんじゃないかな・・・って思う。あまり有名な人は出ていない(と思う・・)し。 お話は、一人暮らしをしているウォルトと隣に住む「モン族」の家族とのお話。モン族役の人達は、たぶん有名な俳優ではないと思うし、この写真のタオ役の子は新人、それからタオのお姉さん・スー役の子もこれが映画デビュー作だそうです。

で、彼らの住む住宅街も、アメリカの家にしては古くて狭い。たとえば「シザー・ハンズ」や「デスパレートな妻たち」や「バック・トゥ・ザ・フューチャー」(パッと思いついただけ、他にもいろいろとあると思うけど・・)に出て来る家は、もっとお庭が広くて、家も広くて新しいセレブな感じがするよね。この映画のウォルトの家のまわりにはアメリカ人は住んでいなくて、アジア人ばかり。立ち並ぶ家も鎧戸が壊れていたり、塗装がはげていたり。その中で、ウォルトの家だけは、芝生もきれいに手入れされて、古いながらもきれいに保たれている。それだけでもウォルトの性格が出ていると思いました。
最初から、ウォルトは「え゛ーっ、こんな事堂々と言っていいの~?」という汚い差別用語をバンバン使う!日本なら「ピー」が入るような言葉だらけ。そ、自分以外の人を認めない的な。
妻が亡くなってからのウォルトの暮らし。
玄関前のポーチの椅子に座って、クーラーボックスの蓋をテーブルにしてビールを飲む。かたわらにうさぎさんの置物と愛犬のデイジー。「母さんが恋しいな、デイジー」なんて、わんこに話しかけるところは涙が出そうでした~。
隣に住むモン族のタオが不良グループに「ウォルトのグラン・トリノを盗め」と命令され、ガレージに忍び込んだところにライフルを突きつける。車を盗めなかったタオは、逃げ出すが、不良グループに痛めつけられる。間違った事がだいっキライなウォルトは、大人数から痛めつけられているタオを助けた。また別の日、偶然、スーが黒人にからまれている所を通りがかり、助ける。なので、彼らの家族に感謝される。お礼に花や食べ物を続々と持って来る異民族の人たち。もらったものを「いらないから」「困るから」「やめてくれ」「庭に一歩も入るな!」と拒絶。しかし、食べ物のおいしさに負ける・・・!?
最初はイヤイヤであったけど隣の家と交流が始まる。人寄せの日に招かれたり、タオに仕事を教えたり。自分の気持ちに変化にウォルト自身が驚いたように「ろくでもない身内(自分の息子達とはうまく行っていない・・・)より、ここの人達の方が身近に思える」・・・と一人でつぶやくシーンはジーンとしました。
仕事をするタオを、タバコを吸いながら見守るシーン、タオに工具を買ってあげるシーン。ただ、それだけのシーンでも、今まで孤独に暮らして来たウォルトの心に小さな暖かい火が灯ったような気がして泣けました。
ここからはネタバレ。これから観る人は読まないでね。映画を観た人は「反転」させて読んで。
彼は、昔、朝鮮戦争で、もう降参しかけている敵の兵士を13人くらい殺した経験があり、それを今でも「最悪の体験」として、心に深く焼き付けたままでいる。これが大きなポイント。
タオを建築現場に紹介した時に、現場監督がウォルトに「お前に貸しがひとつ出来た」と言う。するとウォルトは「クリスマスにケーキでも贈るよ。」と答える。すると監督は「ケーキより、グラン・トリノのkeyが欲しいね。」と。
その時、私はこの映画の結末がわかっちゃった~!って思ったの。
ウォルトが病気である描写が何度か出て来たから、最後は病気で亡くなるのだろう。その死の間際に病院のベッドで横たわりながら、タオにとぎれとぎれに「これはお前に」と言ってグラン・トリノのkeyを渡す・・・って思った。
ま、それは置いといて・・・
タオがまじめに働き始めて順調に行っていた時、また不良グループがタオに嫌がらせをした。ウォルトは、不良のアジト?に乗り込み、一人を殴りつけ「二度とタオに手を出すな!」と報復する。すると、今度はスーにさえ危険が及び始める。ウォルトはそれな決着をつけようとする。
ここから、ラストに向けてのウォルトの行動のひとつひとつに大きな意味がありました。
ウォルトが銃の手入れをしているとタオが「仕返しに行こう!僕にも銃を持たせて」とギンギンにいきり立って家に来る。゜そんなにカッカするな。頭を冷やして4時頃にまた来い。」と言う。
★洋服屋でスーツを買う。袖(だっけ?裾だっけ?)に直しを頼むと1時間で仕上がると言われる。
★教会で懺悔をする。
★床屋に行く。ヒゲも剃ってもらう。20ドル渡し釣りはいらないぜって言う。
・・・・私はね、4時にウォルトが来る前に、スーツを着て、びしっと決めて、ライフルを持ってアジトに乗り込み、自分ひとりで決着をつけるつもりだと思ったの。
でもでも全然違った。
タオに自分と同じ後悔をさせないようにし、自分は人を傷つける事無く、悪いヤツラが全員警察に行くように、すべてが筋書き通りに行くように綿密な計画だった。泣ける~!自分の命と引き換えにタオを守ったのです。
これはぜひ映画館で、自分の目で観てください。
エンドロールで流れる「グラン・トリノ」の曲。しわがれた声でまるで話すように歌っているのは本人?でもエンド・ロールのMUSICのところに「カイル・イーストウッド」って書いてあった。もしや、息子?と思って検索したら、やっぱり息子だった~。歌は、最初の部分をクリント・イーストウッド本人が歌って、あとはジェイミー・カラムという人が歌ったと書いてありました。この記事をどうぞ。
本当に素晴らしい映画でした。終わってからもしばらくそのまま座っていたいと思いました。地味ではありますが、完璧な作品だと思います。後世に残る名作だと思いました。ぜひぜひたくさんの人に観てほしい!と、心から思える最高傑作だと思います。
結構笑えるシーンもあるんです。
★スーが「家に来ない?ごちそうがたくさんあるわよ。」とウォルトを誘った時「俺の犬は食わせないぞ!」と言うと「食べるのは猫だけよ。」とスー。え゛ーーーーっっっ!ってスクリーンのこちら側で引きつる私。「冗談よ。」とスー。あ゛ーっ、びっくりした!この台詞、二回くらいあったような。
★悪いヤツらのうちの一人が、首の下あたりに「家族」って日本語で刺青を入れている。もしもし~、そんな言葉を入れるんだったら、もっと優しい気持ちを持ちなさい!と突っ込みたくなりました~!
★「男の会話を学べ」・・・と床屋さんに入って、お手本に話すウォルトと床屋さんの会話がまたまたおっかしい!それをタオが真似すると「違うんだな~」とダメだし。でも、その後の建築現場監督との会話には、タオ君、見事にこの床屋さんでの予習の成果を発揮していました!
そだ、私1つ気になってるの。
スズメバチの巣はちゃんと取ってあげたのかな~!?知ってる人いたら教えて~!取ってあげてるシーンあったっけ?
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どんぐりさん
ほんといい映画でしたよねえ。
なんだっけな「あの春巻きはあるのか?」だかなんだか「あれが食べられるなら行くけど」的な台詞がかわいかった~。
スズメバチの巣は取ってないよね。すごく気になって。
あと大きくておりこうなわんこがかわいかったね♪
投稿: むぎむぎ♪ | 2009/05/23 10:11
いい映画でした。クリント・イーストウッド、いい役者さんですね。1枚目の画像好きです。頑固だけどだんだんかわいいところも出てきておもしろかった。激しい食べ物の誘惑に負けたり(笑)
エンドロールもよかったです。スズメバチの巣のことはたぶんなかったと思うの。私も記憶にないのです。
投稿: どんぐり | 2009/05/18 23:38